うつ治療のメインは薬物療法~抗うつ薬が効く理由~
2017/09/24
目次
中程度以上のうつには薬物療法が必須
こんにちは、青年A(@seinen1234)です。
今回は「うつ治療の薬物療法」についての記事となります。
早速ですが、こんな疑問はありませんか?
・なぜ心の病なのに、お薬が必要なのか?
・お薬ってどんな仕組みで効くのか?
・なぜ毎日服用しないといけないのか?
・副作用はないのか?
・どんな種類の薬があるのか?
僕は、闘病中ずっとこんな疑問を抱いていました。
(【闘病記】うつ病と顎関節症)
そして先生に質問したり、本を読んだりして「なぜうつ病治療に薬物療法が必要なのか」を理解することが出来ました。
今回は、僕が聞いたり学んだりしたことをお話させていただきます。
うつ治療の薬物療法について、少しでも参考になれば幸いです。
うつのお薬は2種類
うつ病のお薬は大きく2種類あります。
抗うつ薬と抗不安薬です。
1.抗うつ薬
抗うつ薬は、うつ病治療のメインのお薬です。
軽症のうつ病だと、薬を使わなくても自然に治ることもあります。
しかし、中程度以上の「うつ」には抗うつ薬が必須です。
抗うつ薬は脳内の神経伝達物質の量を調整(簡単に言うと増やす)してうつ症状を改善させます。
神経伝達物質は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどによって構成されています。
どの神経伝達物質に働きかけるかによって、使用される抗うつ薬は変わってきます。
・三環系抗うつ薬
→第一世代の抗うつ薬と言われるお薬です(始まりの抗うつ薬)。
セロトニン、ノルアドレナリンの両方に作用しますが、副作用が強くて現在はあまり使われていません。
重症の場合は使われることがあります。
<お薬の例>
・トリプタノール、ラントロン
・イミドール、トフラニール
・アナフラニール、スルモンチール、ノリトレン
・四環系抗うつ薬
→第二世代の抗うつ薬と言われるお薬です。
三環系抗うつ薬に比べて副作用が小さくなったものの、効果は三環系抗うつ薬より少なくなったといわれます。
<お薬の例>
・ルジオミール、テトラミド
・テシプール、リフレックス、レメロン
・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
→第三世代といわれる抗うつ薬です。
セロトニンだけに作用する働きがあります。
(厳密にはセロトニン以外にも少し作用している)
三環系や四環系に比べて副作用が圧倒的に少なく、患者・医師ともに使いやすい抗うつ薬です。
僕もこのSSRIを長く服用していました(レクサプロ)。
<お薬の例>
・デプロメール、ルボックス
・パキシル、ジェイゾロフト
・レクサプロ、プロザック
・SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
→第四世代言われる抗うつ薬です。
セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用する働きがあります。
SNRIも三環系や四環系に比べて副作用が圧倒的に少なく、患者・医師ともに使いやすい抗うつ薬です。
<お薬の例>
・トレドミン、サインバルタ
・イフェクサー、サーゾーン
・NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
→NaSSAは最も新しい抗うつ薬で、SSRIやSNRIとは全く違った仕組みで作用します。
しかし、働きとしては「セロトニンとノルアドレナリンを増やす」という効果があります。
(SNRIやSSRIと同じですね)
<お薬の例>
・リフレックス
・レメロン
現在の抗うつ薬は、三環系抗うつ薬・四環系抗うつ薬・SSRI・SNRI・NaSSAの5種類ということになります。
2.抗不安薬
抗不安薬は、不安とそれに関連する身体症状を和らげるお薬です。
抗不安薬の種類は、ベンゾジアゼピン・アザピロン・バルビツール酸・プレガバリン・天然ハーブとありますが、うつ病ではベンゾジアゼピン系抗不安薬がよく使われます。
しかし、ベンゾジアゼピン系を長期で使用すると依存症状が出る場合があり、2週間程度の使用が一般的です。
(裏を返せば、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を2週間以上使用している場合はその理由を医師に聞いてみましょう)
うつ病において、抗うつ薬と抗不安薬が併用されることがありますが、メインは抗うつ薬だということです。
抗うつ薬がうつ病に効く仕組みについて
それは、抗うつ薬が神経伝達物質を増やすからうつ病に効くと考えられています。
これはうつ病の原因が神経伝達物質の減少にあるというモノアミン仮説に基づいています。
そして、実際に抗うつ薬のおかげでうつ病が改善されていきます。
しかし、うつ病の真の原因はいまだに分かっていません。
なぜかというと、モノアミン仮説だけではうつ病を説明できないからです。
抗うつ薬を服用すれば、すぐに脳内の神経伝達物質は増えます。
しかし、効果が出るのに2週間以上かかったりします。
また、服用したからといってすぐに完治するわけではありません。
ではうつ病の真の原因は何か?
真の原因に近い仮説は、神経可塑性仮説(しんけいかそせいかせつ)と言われています。
(「躁うつ病に挑む」(加藤 忠史)~うつの原因は脳由来神経栄養因子(BDNF)?~)
これは、BDNFという神経の栄養物質が減ることによってうつ病になる、という仮説です。
つまり、抗うつ薬でうつ症状が改善されるのは次のような仕組みからだと考えられています。
「抗うつ薬を服用する→神経伝達物質が増える(正常に近づく)→BDNF(神経の栄養物質)が増える→神経細胞の生まれ変わりが促進される→うつ症状が改善される」という仕組みです。
つまり、抗うつ薬が直接うつ病を治しているのではなく、BDNFを増やして神経の生まれ変わりを促進させているのでうつ病が改善される、ということです。
あくまで仮説ですが、これが抗うつ薬がうつ病に効く仕組みではないかと言われています。
(「躁うつ病に挑む」(加藤 忠史)~うつの原因は脳由来神経栄養因子(BDNF)?~)
なぜ、うつ病に抗うつ薬が必要なのか?
それは、うつはカラダの病気だからです。
内科的な病気といってもいいかもしれません。
肺炎で抗生物質を服用するように、うつ病で抗うつ薬を服用するのは自然なことです。
うつはココロの病気と言われますが、カラダの病気です。
(うつはこころの病気というよりカラダの病気だと思う)
気の持ちようによって治るようなものではありません。
それで治るんだったら、こんなにうつ病で苦しむ人はいないでしょう。
確かに、うつ病になった誘因としてストレス耐性や考え方、物事をネガティブに考えてしまう性格などがあったかもしれません。
しかし、それらはあくまで誘因であって原因ではありません。
(うつの原因はストレス?~ストレスは「原因」ではなく、「誘因」です~)
うつ病は脳内の何らかの異常が確認されている病気です。
(「躁うつ病に挑む」(加藤 忠史)~うつの原因は脳由来神経栄養因子(BDNF)?~)
病気のようなものではなく、国際的に認められた「病気」です。
そして、効果のあるお薬が見つかっている病気でもあります。
ですから、きちんとお薬を服用して病気を治していくことが必要なのです。
中程度以上のうつ病だと自然に治ることは稀ですので、お薬を飲まずに苦しむのではなく、積極的に治療していくことが大切なのです。
どれくらいの期間、服用するのか?
治ってから一定期間服用します。
治ったら飲むのをやめるのではなく、治ってからも一定期間は服用します。
再発予防のためです。
治ったと思っても実はまだ完全には治っていなかった場合があります。
(わかりやすい!うつ病の「完治」と「寛解」の違い)
うつは目に見えないためです。
だから、完全に治った(症状がなくなった)と思っても1年くらいは服用を続けるのが一般的です。
その期間には個人差があるので、主治医の判断に従ってください。
そして抗うつ薬は毎日服用してください。
途中で服用をやめてしまうと離脱症状といって、「めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り・イライラ・不安・不眠・ソワソワ感」が出ることがあります。
(僕はかつて勝手に服用を中断して離脱症状が出ました)
ですので、お薬は毎日きちんと服用することが大切です。
副作用を気にされる方がいますが、最近の抗うつ薬は非常に優秀です。
ぼくはSNRIのサインバルタとSSRIのレクサプロを服用しましたが、副作用は感じませんでした。
副作用のない薬はありませんが、抗うつ薬が副作用の強いお薬だというわけではありません。
(漢方でさえ副作用はあります)
もし体に合わない場合は抗うつ薬の種類を変えればいいのです。
副作用はあまり気になさる必要はないかと思います。
抗うつ薬を何種類も処方されている場合は要注意!
抗うつ薬の処方は原則1種類です。
あっても2種類まででしょう。
1種類または2種類のお薬の量を調節してうつ症状を改善させていきます。
抗うつ薬を何種類も処方されている場合は、医師にその理由を聞いてみましょう。
納得いく回答でない場合は医師を変えたほうがいいかもしれません。
(うつ病の病院選びにお困りの方へ:うつ経験者が選び方を教えます!)
精神科・心療内科はここ最近ですごく増えました。
中にはヤブ医者もいます。
多剤処方をすれば、その症状が病気のために起きているのかお薬の副作用で起きているのか分かりずらくなってきます。
そして国際的にも多剤処方は推奨されていません。
抗うつ薬を何種類も処方されている場合は一度セカンドオピニオンを受けるなどしてご相談されることをオススメします。
おわりに~抗うつ薬はこわい薬じゃない~
僕は高校3年生の時にうつ病を発症しました。
頭がぼーっとする、考えがまとまらない、意味もなくイライラする、体が鉛のように重たい‥等。
カラダの症状が強く出ていたため、自分がうつ病だと全く気づきませんでした。
その状態で高校生活を終え、浪人生活を過ごしました。
地獄のような毎日でした。
そして大学1年生の時に抗うつ薬に出合いました。
服用し続けることによって、見違えるほど回復していったのです。
今思うと、もっと早く薬物療法を受けていれば良かったと思うほどです。
うつ症状のある方で、薬を服用することに抵抗のある方がいらっしゃいます。
しかし、僕は服用した方がいいのではと思うのです。
一度飲んだら最後、一生やめられなくなるといったお薬ではありません。
そして、自分の感情をおかしくするお薬でもないのです。
うつは気合いや根性で治る病気ではありません。
効果が検証されているお薬があるのですから、少しの勇気を出して心療内科・精神科でご相談をされると良いかと存じます。
心療内科・精神科はハードルが高いと思われるかもしれませんが、そうではありません。
風邪をひいたら内科を受診するように、心が風邪をひいたとき心療内科・精神科を受診されることをオススメ致します。
本日もお読みいただきありがとうございました。
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