うつ病は心の風邪?:そんな生ぬるいものではない
2017/11/04
目次
うつは心の複雑骨折だと思う
僕はそのように思います。
こんにちは、青年A(@seinen1234)です。
うつを7年以上経験した僕は、うつ病は心の風邪なんて言う生ぬるいものではないことを知っています。
(【闘病記】うつ病と顎関節症)
本日は2017年6月15日の毎日新聞の記事「「うつ病は心の風邪」の功罪」から一部を抜粋してご紹介します。
よろしくお願い致します。
映画「ツレがうつになりまして。」(2011年)
食欲がなくなり、味がよくわからなくなった。
原因不明で背中の痛みが出る。
仕事にもやる気がわかず、性欲も落ちて妻に求められても応じられない。
毎日の頭痛にも苦しむ。
死にたい気持ちがしのび寄る。
このサイトでも紹介していますが、「ツレがうつになりまして。」は本当に良い本です。
うつ当事者も家族もぜひ一度読んでほしい良書です。
- 『ツレがうつになりまして。』(細川貂々):必読の書!断トツで有名なうつ病闘病記
- 『その後のツレがうつになりまして。』(細川貂々):「ツレうつ」第2弾!ウツ夫と妻のうつ闘病エッセイ
- 『7年目のツレがうつになりまして。』(細川貂々):「ツレうつ」第3弾!うつが完治したあとの話
- 『こんなツレでゴメンナサイ。』 (望月 昭,細川 貂々)~「うつ病」は必ず治ります~
- ツレうつ”から10年 「元気づけようと踊ったことも…」と作者「細川貂々」が振り返る
さて、新聞の冒頭は引用した箇所から始まります。
この症状…多くのうつ経験者が味わったことがあるでしょう。
うつ急性期は特に地獄で、苦しみの身体症状と負の精神症状で寝ているしかありません。
・仕事を辞めないといけないのか
・仕事を辞めるとお金がなくなる
・こんな状態だと次の仕事も見つからない
・生きられない
といった悪循環の堂々巡りが僕の頭をループしていました。
うつは半年から1年半で治るのか?
そんな体調不良に悩んでいた堺雅人演じるサラリーマンの幹夫は、ある朝、毎日自分で作っていた弁当が作れなくなる。
宮崎あおいが演じる漫画家の妻・晴子に勧められ、心療内科のクリニックを訪れると、医者から「典型的なうつ病」と診断される。
「うつ病はこころの風邪」で、服薬すれば半年から1年半で元に戻ると説明され、抗うつ薬と睡眠薬を飲み始める。
結婚5年目の2人の試練が始まる。
服薬すれば半年から1年半で元に戻る…
この期間で治る人は幸せだと思います。
心と体の不調ですぐにうつ病だと分かり、すみやかに心療内科・精神科を受診した人の治る期間でしょう。
(ウィキペディアのうつ情報を信用してはいけない:うつが勝手に治るわけがない)
けども、多くの人は、体と心の不調ですぐには心療内科・精神科を受診できていないといわれています。
最初は風邪かな?と思って内科を受診したり、体のケガかな?と思って整形外科を受診したりするのです。
僕もそうでした。
自分の不調は噛み合わせと顎関節症が原因だと思い込んで、歯科治療ばっかり受けてしまっていたのです。
(顎ずれを気にしすぎないで!病気になんて、ならないから。)
そうして医者のドクターショッピングで疲れ切った末に心療内科・精神科にたどり着くという患者さんが多いのです。
つまり、それまで適切な治療が出来ずに病状が悪化しているので、治療期間も長引くということです。
なんでも早期発見早期治療が基本ですね。
うつは薬だけで治るのか?
「うつ病はこころの風邪」とは、1999年以降にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という新しい種類のうつ病の薬(抗うつ薬)が登場してきたのと同時に言われ出したうたい文句だ。
風邪と同じようにだれもがかかる病気で、精神科へ行って薬をもらえばよくなる。
製薬会社は薬を作って売るのが仕事です。
ですので薬を広めるためにも「うつ病はこころの風邪」というキャッチコピーを作ったと言われています。
うつをはじめとした精神疾患の偏見を和らげ、誰でもかかりうる病気だという理解を世間に促した点は良かったと思います。
実際にその通りだから。
しかし、薬を飲むだけで良くなるのかというとそうではありません。
あまりのプレッシャーや仕事過多の職場を変えたり、いじめのクラスや学校を変えるといった”環境調整”が治療のカギを握るのです。
(うつ治療に「環境調整」は必須~その理由と5つのやり方~)
また、うつになりやすい思考傾向を改善する認知行動療法やアサーションも有効ですね。
(認知行動療法とは?~認知行動療法を世界一分かりやすく解説しました~)
薬だけ飲んだら治る風邪とは違って、うつ病はあらゆる角度からじっくり治していくことが求められる病気ということです。
薬がいらないうつもある
うつを、「身体性うつ」と「心理性うつ」に分けて考えたい。
身体性うつとは、従来の中核的なうつ病で、「服薬と休息」が治療の大原則となるうつである。
一方、心理性うつは、落ち込みを生む確かな原因があり、それにうまく対処できれば(あるいは原因がなくなれば)治る可能性が高いうつだ。
大事な治療は服薬や休息ではなく、面接や環境の調整である。
学術用語として「身体性うつ」と「心理性うつ」という言葉があるのかは分かりません。
この著者が便宜上定義したのかもしれませんが、いわゆる典型的なうつに”服薬と休息”が必要なのは(僕の実感から)確かだと思います。
(うつの休養の仕方~休養は治療の1つです~)
心理性うつに関しては先ほどお伝えしたように、気分の落ち込みを招く”環境”を調整することで良くなるというものですね。
薬が第一の治療ではない心理性うつの患者に、うつ病の病名をつけ、薬の治療を優先させたという問題があった。
当時の精神科医は心理性うつに対して、話をよく聞いて原因を探る代わりに、従来の「服薬と休息」の原則を当てはめてしまったのである。
環境の調整だけで改善する患者に対しても薬を与えてしまったことが、2000年代のうつ患者を急増させた要因だと著者は分析しています。
うつの診断は非常に難しいのも一因だと僕は思います。
骨折はレントゲンをみれば分かります。
ガンはCTやMRIを見れば分かります。
しかしうつ病ははっきり診断できない病気なのです。
(大うつ病性障害・双極性障害治療ガイドライン~”うつ”のすべてがここにある~)
ただ、うつは脳の何らかの異常なので、いずれははっきり診断できるようになるのではと僕は思っています。
(これからの「うつ」の話をしよう:未来のうつ治療と支援のあり方)
しかし現在の精神医学では追いついていません。
なかには「うつがはっきり診断できます」みたいな誘い文句で患者をだますケースもありますが、鵜呑みにしてはいけません。
(日本うつ病学会が光トポグラフィー検査について異例のコメント│検査結果に惑わされないで!)
うつは、ゆっくりゆっくり回復していく
ツレは、一時急によくなったと思ったらまた悪化し、自分を責めて頭までふとんにくるまり、自殺未遂もしてしまう。
眠れない日々の後、昼も夜も眠ってばかりの状態を経て、徐々に回復していく。
うつになると、「すべて」のことをネガティブに考えてしまいます。
物事には+と-が内包されていますが、-ばかりに目がいってしまうのです。
(認知再構成法(コラム法)のやり方~あなたのその考えはほんとうに正しいのか?~)
健康な人は「考え方が悪いんだよ、プラスに考えなきゃ」とか思うかもしれませんが、それが出来たら苦労しないのです。
骨折の人に走りなよ、というのと同じです。
症状なのだからある意味仕方ないのです。
そして自殺が頭をよぎります。
死にたいという積極的な思いではなく、「一刻も早く苦しみから逃れたい」から自殺が頭をよぎるのです。
しかし自殺は絶対にいけません。
(「うつの自殺は絶対あかん」~してはいけない4つの理由~)
ゆっくりゆっくり回復していくのですから。
(【うつ病の問診】うつ症状はゆっくり回復していくので焦らないことが大切)
おわりに
『ツレがうつになりまして。』は、うつ病の誤解も多く、正しい知識が広まっていないと感じたことから出版に至ったようです。
本は大ベストセラーでしたね。
うつは心の風邪とかいう生ぬるいものではありません。
ほんとに苦しくつらく、先が見えないように感じます。
しかし諦めないでほしいんです。
(真矢ミキさんがうつ病を告白!│対人恐怖に摂食障害…あきらめないことの大切さ)
不治の病ではないのですから。
時間はかかります。
これは仕方ありません。
しかし明けない夜はないのです。
じっくりじっくり「今」できることに焦点を当てて生きていければと思います。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
青年A