わかりやすい!うつ病の「完治」と「寛解」の違い
2017/09/30
目次
- 1 うつ病の「完治」と「寛解」の違いはなんなのか?
- 2 なぜうつ病では「寛解」という用語が使われるのか?
- 3 「寛解」のチェック方法
- 3.1 1.抑うつ気分(Depressed Mood)
- 3.2 2.罪責感(Feelings of Guilt)
- 3.3 3.自殺傾向(Suicide)
- 3.4 4.入眠障害(Insomnia Early)
- 3.5 5.熟眠障害(Insomnia Middle)
- 3.6 6.早朝睡眠障害(Insomnia Late)
- 3.7 7.仕事と活動(Work and Activities)
- 3.8 8.精神運動抑制(Retardation:Psychomotor) (思考や会話が遅くなる、集中力が落ちる、自発的運動の現象)
- 3.9 9.焦燥(Agitation)
- 3.10 10.精神的不安(Anxiety Psychological)
- 3.11 11.身体的不安(Anxiety Somatic) (胃腸症状や動悸、頭痛、過呼吸など不安に伴う身体症状)
- 3.12 12.消化器系身体症状((Gastrointestinal))
- 3.13 13.一般的な身体症状(Somatic Symptoms General)
- 3.14 14.生殖器症状(Genital Symptoms) (性欲の低下、生理不順など)
- 3.15 15.心気症(Hypochondriasis)
- 3.16 16.体重減少(Loss of Weight)
- 3.17 17.病識(Insight)
- 4 「完治」のチェック方法
- 5 うつ病を「完治」「寛解」させる方法
- 6 おわりに
うつ病の「完治」と「寛解」の違いはなんなのか?
先に結論を述べたいと思います。
「完治」と「寛解」の違いはあいまいです。
すっきりしないと思いますが、これが答えです。
一般に、
完治:病気やケガが完全になおること(再発の可能性は原則なし)
寛解:病気やケガが完全になおったと思われる状態(再燃の可能性あり)
と解釈されています。
ちなみに、寛解から症状がぶりかえすことを再燃、完治から症状がぶりかえすことを再発といいます。
(「うつ」の再発を恐れないで!:たった1つのその理由)
寛解→再燃
完治→再発
うつ病において「完治」と「寛解」の違いはあいまいです。
なぜか?
病気やケガが完全になおったのか(完治)、病気やケガが完全になおったと思われる状態なのか(寛解)は本人の感覚と経過を観察しないと分からないからです。
だからうつ病の「完治」と「寛解」の違いがあいまいなのです。
うつ病の完治と寛解の状態を知りたい方は下の記事をお読みください
↓
なぜうつ病では「寛解」という用語が使われるのか?
うつ病でも完治という言葉は使われますが、「寛解」という言葉をよく見聞きしますね。
理由は、うつは再発(再燃)しやすい病気だからです。
(全員が再発(再燃)するというわけではありません)
再発(再燃)しやすい病気としてガンがあります。
ガンでも寛解という用語が使われます。
再発(再燃)しやすい病気だからです。
つまり、再発(再燃)しやすい病気で、症状がなくなってしばらくの状態を寛解というのです。
「しばらく」の期間ですが、ガンでは5年間再発が見られなければ「完治」と呼びます。
(ガンによりますが、一般的に)
流れとして、「症状がなくなった!=寛解→しばらく過ごす→症状でない!→完治」ということになります。
「寛解」のチェック方法
ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAM-D)で7点以下を「寛解」としています。
0点~7点:正常
8点~13点:軽症
14点~18点:中等症
19点~22点:重症
23点以上:最重症
この検査で7点以下だと絶対に寛解であると言えるものではありません。
また本来は患者さん本人が選ぶのではなく、検査をする人が患者さんの状態をみて選ぶものですが、最も広く使われており参考になると思います。
1.抑うつ気分(Depressed Mood)
0:全くなし
1:質問された時のみ抑うつ気分を訴える
2:自発的に言葉で抑うつ気分を訴える
3:表情や態度など非言語的に抑うつ気分が表現される
4:自発的な言語・非言語的に抑うつ気分のみを実質的に表現される
2.罪責感(Feelings of Guilt)
0:全くないと感じる
2:過去の失敗や罪を繰り返し考え、罪業念慮を持つ
3:今のうつ症状は罰であると感じる。罪業妄想
4:非難などの幻聴・幻覚を認める。
3.自殺傾向(Suicide)
0:全くなし
1: 生きている価値はないと感じる
2:死を考えたり願ったりする
3:自殺を考えたり、そのそぶりがある
4:自殺企図(自殺しようとする)
4.入眠障害(Insomnia Early)
0:入眠困難なし
1:時々、寝付くのに30分以上かかる
2:毎晩寝つきが悪い
5.熟眠障害(Insomnia Middle)
0:熟眠に問題なし
1:夜間に落ち着かなかったり睡眠が妨げられている
2:夜間に起きている
6.早朝睡眠障害(Insomnia Late)
0:問題なし
1:早朝に覚醒するが、再入眠できる
2:起床すると再入眠することができない
7.仕事と活動(Work and Activities)
0:問題なし
1:仕事や趣味に対して疲労感、気弱さ、無力感を感じる
2:仕事や趣味に対して興味を失う
3:活動に費やす時間が実際に減ったり、生産性が低下する
4:この病気のために仕事を中断している
8.精神運動抑制(Retardation:Psychomotor)
(思考や会話が遅くなる、集中力が落ちる、自発的運動の現象)
0:正常な会話と思考
1:面接時にわずかな遅延がある
2:面接時に明らかな遅延がある
3:面接が困難
4:完全な昏迷
9.焦燥(Agitation)
0:なし
1:常に落ち着かない様子
2:手遊びや髪いじりがある
3:座っていられない
4:手を揉んだり、爪や唇を噛んだり、髪を抜いたりする
10.精神的不安(Anxiety Psychological)
0:問題なし
1:緊張と怒りっぽさ
2:些細なことでうろたえる
3:表情や会話に不安が表れている
4:質問するまでもなく、恐怖が表出されている
11.身体的不安(Anxiety Somatic)
(胃腸症状や動悸、頭痛、過呼吸など不安に伴う身体症状)
0:ない
1:軽度
2:中等度
3:重度
4:無能力化
12.消化器系身体症状((Gastrointestinal))
0:なし
1:食欲の低下。しかし促されなくても食べ、食事量は正常
2:促されないと食べるのが困難。食欲と食事量の低下がある
13.一般的な身体症状(Somatic Symptoms General)
0:なし
1:手足、背中、頭が重い。背部痛、頭痛、筋肉痛。体力の低下や疲労感
2:明瞭な症状があれば、この「2」とする
14.生殖器症状(Genital Symptoms)
(性欲の低下、生理不順など)
0:なし
1:軽度
2:重度
15.心気症(Hypochondriasis)
0:なし
1:自分の身体へのとらわれ
2:健康のことばかりにとらわれる
3:頻繁な訴えや助けを求める
4:心気的な妄想
16.体重減少(Loss of Weight)
0:体重減少なし
1:おそらく現在の病気による体重減少
2:自己申告による確実な体重減少
3:評価なし
17.病識(Insight)
0:うつ状態で病気であると認識している
1:病気であると認識しているが、食事や気候、過労、ウイルスなどのせいにする
2:病気であることを否定する
「完治」のチェック方法
これは症状が全く気にならなくなってしばらく経ち、症状が再び現れないと完治と言えます。
ここでいう「しばらく」の期間は個人によってばらつきがあります。
うつ病を「完治」「寛解」させる方法
以下の記事にまとめておりますので、ご参照くださいませ。
おわりに
うつ病では完治より「寛解」という言葉をよく目にします。
ぼくは闘病中そのことが疑問でした。
「なぜ完治という言葉ではなく寛解なんだ?」
「一生治らないということなのか?」
と不安に思ったものです。
しかし、再発しやすい病気に「寛解」という言葉を使うということを後で知りました。
なにもうつ病だけに使うわけではないのです。
寛解して問題がなければ完治に至るのです。
そして絶対再発しないといえる病気なんてないのかもしれません。
再発する可能性の高い病気→寛解という用語を使う
再発する可能性の低い病気→完治という用語を使う
ということです。
あまり完治と寛解の違いの用語の違いについてこだわる必要はなさそうです。
まして昔の僕のように「完治」ではなく「寛解」という言葉に不安を抱く必要はないのです。
心穏やかに前向きに治療に励みたいものですね!
本日もご清聴ありがとうございました。
まとめ
・完治と寛解の違いはあいまい
・完治、寛解の状態とは症状がなくなった状態のこと
・寛解→問題なし→完治
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