うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上):検査結果を鵜呑みにしてはいけない
2017/10/08
目次
現時点で「うつ」の客観的診断装置はない
こんにちは、青年A(@seinen1234)です。
2016年7月13日の「yomiDr.(ヨミドクター)」に、うつ患者にとって必要な知識が書かれていたのでご紹介したいと思います。
(うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上))
内容は「うつの診断に光トポグラフィー検査が役立つのかどうか」ということです。
結論からいうと、”期待はずれの検査手法”ということです。
なぜそういえるのか?
そのあたりも含めてご説明していきます。
本日もよろしくお願い致します。
光トポグラフィー検査とは?:脳の血流を調べる検査
「光トポグラフィー検査(NIRS)とは?:オススメできない7つの理由と精神疾患の検査法」で詳しく書いていますが、一言でいうと、光トポは脳の血流を調べて精神疾患を鑑別する検査手法のことを言います。
具体的には、「うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、異常なし」のどれかを鑑別するということです。
頭に電球のようなセンサーがついた帽子をかぶり、音声の指示に従って問題を回答していきます。
「「あ」から始まる単語は?」と聞かれ、「愛、秋、赤…」などと思いつく単語をできるだけ答えるというシンプルな問題です。
回答できた単語の数が多いほど良いというわけではなく、回答前後の脳血流を測定しているらしいです。
被験者がうつ病の場合は、健常者よりも脳血流量の変化が乏しく、双極性障害では、脳血流量の山のピークが後半に来るという。
統合失調症の場合は、脳血流量の増加のタイミングがずれ、課題終了後に増加するなど不自然な変化を見せるという。
(引用元:うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上))
2014年4月から光トポの保険診療が可能となり、検査を待つ患者で予約殺到となったといいます。
光トポグラフィー検査の問題点:患者が検査結果にだまされる
光トポグラフィー検査の何が問題なのかを以下にまとめます。
問題点①:脳血流ではなく頭皮の血流が多く混入している
うつ病に代表される精神疾患は、脳内の何らかの異常であるのに、光トポでは(個人差が多い)頭皮の血流を多く測ってしまっているのです。
(うつはこころの病気というよりカラダの病気だと思う)
脳血流を測りたいのに頭皮の血流を測っても意味がないし鑑別もできません。
脳の血流を測定しているつもりが、実は頭皮の血流を多く測っていたというのであれば、目も当てられない。
現状では、光トポグラフィーの測定値の中に、頭皮の血流がどれくらい混ざっているか、正確な割合は分からないのだという。
宮内さんと星さんはこの論説で「光トポによるうつ症状診断補助の有効性・信頼性を上げるためには、確実な頭皮血流の除去法の開発が必須である」と強調している。
(引用元:うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上))
問題点②:向精神薬の服用が考慮されていない
光トポグラフィー検査を受ける前に、すでに抗うつ薬などを服用している患者は多いはずです。
(うつ治療のメインは薬物療法~抗うつ薬が効く理由~)
それなのに、そのお薬の影響を十分考慮しないまま検査を受けることになるため、診断結果の信頼性がないということです。
向精神薬の服用の影響が十分検討されていないとの指摘は、専門知識のない人にも分かりやすい。
(引用元:うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上))
問題点③:診断精度が極めて低い
うつ患者であっても、「うつ病」と診断されなかったり、健常者でさえ”精神疾患有り”と診断されることがあるということです。
(「病は気から」~うつ病になりやすい性格をアンインストールする~)
「光トポグラフィーの結果は個人差が非常に大きく、うつ病の患者であっても、うつ病の特徴的なパターンから大きく外れる人が多い」と指摘。
「盛んに報道された疾患ごとの脳血流の特徴的パターン(波形)は、多数の近赤外線センサーで測定する多くの部位のうち、最も特徴的な変化が表れた1か所のデータを抜き取って示したもの。
それを複数部位の平均値であるかのような図にして、それぞれの精神疾患に特徴的なパターンがあると伝えたことは問題だ。
光トポグラフィーの1か所のデータは再現性が低く、このような方法で検査を2回すると異なる結果が得られる可能性がある」と指摘する。
(引用元:うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上))
光トポ検査では、うつ病、双極性障害(躁鬱病)、統合失調症の特有の1パターンを図示していて、患者の波形がそれらのどれに近いかで精神疾患を鑑別しています。
1パターンのみであって、複数部位の平均値でないことも精度に欠けるゆえんでもあります。
(1パターンのみで鑑別できるほど精神疾患は単純ではない)
問題点④:誤診が起きる
例えば血液検査の結果を数値で見せられて、その結果を疑う人は少ないでしょう。
レントゲンやMRIなどの画像検査の結果を見せられて、その画像を疑う人は少ないでしょう。
それと同じで、光トポの知識がないまま、数値や図形の検査結果を見て「あなたはうつ病ではなく双極性障害(躁鬱病)でした」などと言われると、信じてしまう人が少なくない気がします。
(僕も信じそうになりました)
そのため、本当はうつ病なのに、双極性障害(躁鬱病)の治療に切り替えてしまって、症状が回復しない…といったパターンは患者によって不幸の何物でもありません。
また、光トポを受けさせ、検査結果をお伝えしたあと、高額な(おかしな)治療を勧める医院もあります。
患者がこんなとんでもない被害を被ることがないよう祈るばかりです。
まとめ:光トポの検査結果に惑わされてはいけない
現時点で、精神疾患を(客観的に)鑑別できる診断検査はありません。
ですので、光トポグラフィー検査の結果に惑わされてはいけません。
2009年頃でしょうか、日本で開発され、精神疾患への応用が検討された光トポグラフィー検査が注目されたのは。
「この検査で精神疾患患者を救えるかもしれない」という期待が大きすぎて、メディアも大々的に取り上げたことも誤解の一因となったのもかもしれません。
現実は、鑑別補助検査でしかなく、保険診療から外れる可能性すらあるといわれています。
それぐらい不確かなものであることを理解しておいてほしいと思います。
(日本うつ病学会が光トポグラフィー検査について異例のコメント│検査結果に惑わされないで!)
おわりに:僕は光トポグラフィー検査の結果に惑わされました
詳細は【闘病記】うつ病と顎関節症でストーリーにしていますが、7年以上うつ病に苦しみました。
次第に「僕は本当にうつ病なのか?ほかの病気ではないのか?」と主治医を疑うようになりました。
血液検査や画像検査であれば、すんなりと受け入れられたかもしれません。
数値や目で見て分かるのですから。
しかし、うつ病をはじめとする精神疾患は、検査手法が「問診」です。
なので、なかなか治っていると思えない時期に、「診断が正しいのか?」と不信感を抱くようになったのです。
当時は東京に住んでいたので、ネットで大きく宣伝している医院で光トポグラフィー検査を受けました。
(光トポグラフィー検査(NIRS)とは?:オススメできない7つの理由と精神疾患の検査法)
結果、双極性障害(躁鬱病)と診断されました。
自分としてはハイになったり沈んだりといった気分の浮き沈みを感じてはいませんでした。
ショックでした。
しかし、それっぽい検査結果を見せられて鵜呑みにしてしまって、怪しげな高額治療に足を踏み入れそうになったのです。
(家族の支えと助言に助けられて治療はせずにすみましたが)
今、精神疾患に悩まされている方は、客観的な検査を受けてみたい!と思っている方も多いと思います。
しかし、光トポグラフィー検査をオススメしません。
精度がほんとに低く、受けたことで逆に惑わされたからです。
「保険適用は時期尚早。なぜ、この程度で認められたのか理解できない」
(引用元:うつ診断に光トポ検査は役立つか?(上))
皆様の健康を願って本日も終了といたします。
ありがとうございました。
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