『うつ病放浪記』(工藤 美代子)~うつを生き抜くための6か条~
2017/10/17
目次
工藤美代子さん:医者を探して三千里
(ぼくの所有本)
血液検査、レントゲン、CTスキャン、鍼灸、漢方…
ドクターショッピングの果てにうつ病を受け入れたノンフィクション闘病記。
それが今回ご紹介する『うつ病放浪記 絶望をこえて生きる』です。
夫はうつ病を疑っていた
夫は妻(工藤美代子さん)の様子にうつ病を疑ったようです。
長い間ずっと調子が悪くて、あらゆる病院に行ったのに異常なしと言われて、てんてんの病気以外にないと確信していたようです。
(工藤家では、うつ病のことを「てんてん」と呼ぶようになっていた)
工藤さんのように、身体症状が全面に出て、精神症状に気づきにくいうつ病(いわゆる仮面うつ病)もあります。
(「仮面うつ」って知ってる?カラダの症状だけでもうつ病の可能性はあるんです!)
うつ病は精神と身体の両方に症状が出るため、うつ病と気づかないこともあるのです。
(症状が精神面、身体面のどちらに強く出るかは個人差があります)
ぼくもそうでした。
それはそれはいろんな病院を受診しましたよ。
口腔外科、整体、あやしげな治療…自分がうつ病だなんて全く思わなかったのです。
(詳細は、【闘病記】うつ病と顎関節症)
工藤さんは、子宮筋腫の手術を受けてから地獄の日々が始まったようです。
術後の頭の痺れ
↓
婦人科でホルモン補充療法(効果なし)
↓
台湾の有名漢方医兼整体師で治療(効果なし)
↓
バリ島の有名鍼灸師で鍼治療(効果なし)
…
ありとあらゆる病院を受診されました。
こんなこともあったといいます。
銀座に評判のよい婦人科のクリニックがあると教えてくれた。
芸能人や女性起業家などの有名人も通っているそうだ。
「とにかく内診をしてCTを撮りましょう。
待合室で名前を呼ばれるまで待っててください」
これ以上、談話は無用とばかりに先生はカルテを閉じて、待合室を指差した。
案の定、先生にCTスキャンのための棒状の器具を膣に入れられたら、激痛が走った。
保険診療なのに支払いは1万円を超えていた。
なるほど、CTを撮らなければ、商売にならないのかもしれない。
こんな都心の一等地に豪華なクリニックを開設しているのだから費用もかかるのだろう。
医者は患者を救うために存在する。
だから患者に寄り添うココロが大切だ。
しかし残念ながら、傲慢な態度の医師や患者を実験物(または金儲けの道具)としか見ない医者もいるのが事実です。
(うつ病の診断で光トポグラフィー検査は危険!┃患者をだます例が多発)
医者には道徳を学んでほしい(もちろん素晴らしい医者もいらっしゃいますが)。
普通になりますように
「普通になりますように」…
これが工藤美代子さんの願いだったそうです。
この願い…ほんとに良く分かります。
今まで出来ていた「普通の事」が出来なくなる病気がうつ病なのです。
”普通に出社する”
”普通に働いて生活する”
”普通に家事をする”
”普通に人と話す”
そういった当たり前のことが出来なくなり、「自分はほんと価値がない人間だ」と自分を責めてしまうことが少なくありません。
工藤さんもそういった自責の念にとらわれていたようです。
すぐにうつ病の薬を服用できなかったのは偏見があったからだった。
私の頭の中は最近の雑誌や新聞でさかんに取り上げられる、うつ病治療のための薬の副作用についての知識でいっぱいだった。
廃人同様になった人、錯乱状態になって他人を傷つけた患者など、あらゆる悲惨な症例が記事となって紹介されていた。
昔のうつ病の薬は分からないが、今のうつ病の薬は副作用が強いものではない。
実際、ぼくはサインバルタやレクサプロ(ともに抗うつ薬)を服用したが、副作用なんて感じなかった。
個人差はあるかもしれないが、そんなに副作用を心配するものではないのだ。
(薬物療法~抗うつ薬、抗不安薬~)
また、メディアの情報をうのみにしてはいけない。
正しいとは限らないからだ。
(情報のウソ、ホント。見極める力~意見と事実の違い~)
その後、ジェイゾロフトという薬が劇的に効いて普通の生活を送れるように回復していった。
他のうつ病経験者の体験談も記載されている
このへんが普通の闘病記と違うところかなって思います。
そしてノンフィクション作家の得意とするところでしょう。
6人の経験者のリアルな体験談と得たことがまとめられています。
1、山本哲雄さんのケース:昇進プレッシャーと家庭崩壊
2、立川郁也さんのケース:診断された日に即入院
3、久保田麻美さんのケース:同僚の自殺未遂が引き金に
4、坂口百合さんのケース:病を受け入れられなくて
5、富田良介さんのケース:理不尽な異動、そしてうつ病に
6、尾崎有子さんのケース:うつ病で2日間動けなかった
また伊藤美紀先生という美代子さんの主治医との対談も収録されています。
工藤:うつ病って几帳面な人がなるっていいますけど、本当にそうなんですか?
伊藤:そうでもないですよ。
誰でもなる病気なんです。
ただ、そういう几帳面であるとか、ずぼらであるという性格が、病気の経過を変えていくことはあります。
かなり几帳面で強迫的な方は、治るのに時間がかかったりします。
患者さんには、硬い方が多いですね。
もっと力を抜いてもいいのに、と思ってしまうような方ですね。
診察室で深呼吸して頂くこともありますよ。
ガチガチになっておられるから、「もっと力を抜いてゆっくり息をしましょうよ」なんて、そう伝える場合もありますね。
「24時間ずっとこんな感じなの」って、驚くくらい力が入ってる方もいらっしゃいます。
精神科医の生の声は貴重ですね。なかなか他の先生の本音を聞く機会が少ないので。
うつ病を生き抜くための6か条
この6か条は本書の核心部分なので、詳細は本書にゆだねますが、まとめると、「人生万事塞翁が馬」ということだと思います。
(うつの人にかける言葉~人間万事塞翁が馬~)
”何が幸せで何が不幸かは最後まで分からない”ということです。
私はここ5年くらいの間に、面白い現象を目の当たりにした。
私と同世代の友人たちの夫が次々と定年を迎えたのである。
60代の後半から70代の男性たちだ。
早い話が、大企業のトップだった人も、中小企業でまったく出世しなかった人も、定年になれば、ただのオジサンなのだ。
現役の頃の地位など、なんの役にも立たない。
どんなに出世した人でも、妻や子どもたちと不仲な夫の老後は惨めだ。
ついに一度も役職に就くことがなく、平のサラリーマンで終わっても、一家団欒を楽しんでいる老人は幸せそうだ。
これはどこの家庭でもほぼ同じだ。
穏やかな老後の日々を過ごせれば、人生の収支決算はじゅうぶんに成功だったといえるのではないか。
仕事に打ち込むのを否定はしない。
ただ、仕事を重視するあまり、大きすぎる犠牲を払っても、それに気づかないまま生きていると必ず最後にもっと大きい代償を求められる。
あくまで仕事は快適な生活を送るためのツールの1つだと捉えたら、うつ病とも共存できるはずだ。
ほんとそのとおりだよな~。
おわりに:工藤美代子さんの闘病記+うつ経験者の闘病記+精神科医との対談+うつ克服の6か条が詰まった本
それがこの『うつ病放浪記 絶望をこえて生きる』ということです。
こういう闘病記を読むと、「つらいのは自分だけじゃないんだあ~」と励まされますね。
うつの先輩が大勢いるのです。
そして克服していかれています。
その考え方、方法、ストーリーを学んで、自分に活かせていけたらと思います。
本日もありがとうございました。
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