「うつ病治療の基礎知識」(加藤 忠史)~初心者向けでは満足できない!うつ病を深く理解したい方の本~
うつ病の診断、分類、原因、治療法を深く理解したい向けの本
著者の加藤忠史先生の本は、「「双極性障害ってどんな病気?」(加藤忠史)~この本より分かりやすい「躁うつ病」の本をぼくは知らない~」をご紹介したことがあります。
非常に分かりやすい解説が特徴です。
(引用元:「うつ病治療の基礎知識 (筑摩選書)」より)
今回ご紹介する「うつ病治療の基礎知識 (筑摩選書)」は中級者向けの本だと僕は思います。
本屋さんでは、うつ病を分かりやすく解説した本が多く売られています。
しかし初心者向けのため、深い内容まで取り扱っていません。
例えば、「うつ病には抗うつ薬や抗不安薬を使います」や
「うつ病の原因は神経伝達物質の減少が一因と考えられています」といった解説を見たことがあるでしょう。
しかし、「それぞれの薬の効き方と歴史」や「うつ病の本当の原因」については語られていないのが現状です。
この「うつ病治療の基礎知識 (筑摩選書)」はそういった疑問に答えてくれています。
読むことで大まかに次のようなことがわかります。
・双極性障害(躁うつ病)との鑑別
・うつ病の細かな分類について
(メランコリー型、非定型、季節性うつなどの症状と特徴)
・うつ病の原因
現在では、抗うつ薬を飲むことによってこれらの神経伝達物質が増えた結果、
BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が増え、そのことによって神経の形や働きが変化し、
そのことによって抑うつ気分が改善しているのではないかと考えられています。
・うつ病の治療法
(薬物療法、精神療法、修正電気けいれん療法、経頭蓋磁気刺激(TMS)、光療法、脳深部刺激など)
・双極性障害という病気を知っておくことの必要性
・新型うつ病への対処法
・良い主治医の見つけ方
いつものように本書から一部抜粋して紹介します。
〈双極性障害について〉
・躁状態と軽躁状態では、軽躁状態の方が診断は困難です。
・診断のポイントは、もともとのパーソナリティとは全く違う状態になり、周囲の人から見ても
「いつものあの人とは違う」とはっきりわかるくらいの変わりようだったかということです。・普段は落ち着いている人が、まるで人が変わったようにハイな調子が続くという状態が軽躁状態です。
〈適応障害〉
・うつ病はストレスが終わっただけでは治りません。
・一方、DSM-5の適応障害の基準には、
「いったんストレスが終わると、症状は半年以内に治る」と書かれている通り、
ストレスがなくなったら治るのが適応障害です。〈うつ病の分類〉
・「大うつ病性障害」と診断したら、次に「重症度」および病相の回数を判定し、それから
「特定用語」でその特徴を記載する、というのがDSM-5における大うつ病診断の流れになっています。(具体的には「メランコリー」「非定型」「季節性」「周産期の発症」などがあります)
〈DSMに関する議論〉
・今後さらに生物学的な研究を進め、精神症状によってではなく、脳の病態によって
精神疾患の分類をやり直す、ということを目指さなければならないのは間違いありません。・しかし、現状では、十分にデータがそろっていません。
・今の段階では、DSMを使った診断は、最善ではないにしても、次善の策であると言ってもよいと思います。
〈治療に用いる薬〉
・うつ病はこれらの神経伝達物質が不足することによっておきるとは限らないということです。
・なぜなら抗うつ薬を飲むと脳内の神経伝達物質はすぐに増えます。
・それなのに抑うつ気分はなかなか改善せず、
抗うつ薬が効き始めるまでには少なくとも1、2週間かかるのが普通です。・つまり抑うつ気分は、これらの神経伝達物質の量によって直接決まっているわけではないのです。
・現在では、抗うつ薬を飲むことによってこれらの神経伝達物質が増えた結果、
BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が増え、そのことによって神経の形や働きが変化し、
そのことによって抑うつ気分が改善しているのではないかと考えられています。〈気分安定薬〉
・主に双極性障害に使う薬です。
・実は気分安定薬という言葉はきちんと定義されておりません。
・ですから気分安定薬を強いて定義しようとすれば、
「双極性障害に対し予防効果が示唆されている薬剤のうち、抗精神病薬でないもの」と
いうことになるかもしれません。・この中で双極性障害の予防効果が確実なのはリチウムとラモトリギンです。
うつ病の研究は日々進化している
うつ病の研究は日々進んでいます。
本書でも述べられていますが、
いずれ精神疾患(うつ病など)と神経疾患(脳梗塞など)は、
合わせて「脳疾患」とよぶようになっていくでしょう。
まだはっきりとした原因は分かっていませんが、
いずれは解明され、すぐに効く特効薬ができるのではないかと思っています。
この本は、うつ病の今と未来を教えてくれる、そんな本だとぼくは思っています。
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