『精神科医がうつ病になった』(泉基樹):うつは”自分には耐えられない変化”が起こったときに発病する
2017/10/04
目次
僕と親友は、同じ「うつ病」にかかりました。
そして僕はなんとか生き延び、親友は死んでしまいました。
こんにちは、青年A(@seinen1234)です。
今回は、反響に反響を生んだ『精神科医がうつ病になった (廣済堂文庫)』をご紹介します。
(ぼくの所有本)
うつを経験している精神科医の言葉は納得感が違う!
うつ病は本当に苦しい病気です。
精神症状、身体症状に加えて、偏見、周りの人の理解のなさが重なることがあるのです。
「ガン」だと宣告されて、
「働け」
とか
「ゆっくりしてばかりじゃいけないだろ」
と言う人はいませんが、
「うつ病」だと
「まだ治らないのか」
「働けるんじゃないのか」
といった無意識のプレッシャーに苦しめられたりするのです。
(僕もそんなプレッシャーを受けました。信頼している両親からもです)
精神科医はそういった苦しみがあるということ、どのような治療法があるのかを学んで医師となっています。
しかし患者の「本当の」苦しみは分かりません。
医師が悪いのではなく、それは「経験」したことがないからです。
経験しないと本質は分かりません。
(もっとも、うつ病の苦しみを経験しないにこしたことはないしょうが)
そういった意味で、うつ病を経験した精神科医の話はほんっとに貴重ですね。
この『精神科医がうつ病になった (廣済堂文庫)』はもともと単行本として売られていたようです。
しかし、反響が大きくて待望の文庫版が発売されるに至りました。
僕が所有しているのは文庫版ですので、文庫版について紹介していきたいと思います。
だから、僕は過剰に”いい子”になろうとした。「がんばっている自分」でなければ愛されないような、そんな気がしていたからだ。
著者である泉さんの家庭ではお父さんとお母さんのケンカが絶えなかったようです。
そして大声のケンカを聞くのが耐えられなくなり、耳にかみ砕いたちくわを入れたこともあるとか。
(異常を感じた母親が耳鼻科に連れていき判明した)
そんなこともあって、”いい子”にしておかないと、母にも父にも愛されないのではという恐怖が幼少期に植え付けられたのです。
僕は本書を読んでいて、この幼少期のトラウマがうつ病の遠因になっているのではと感じました。
親友との出会い
著者の泉基樹さんは、高校で親友と出会う事になった。
そして彼もまた、愛に飢えていた。
彼の父親は一流大学を卒業した超エリートで、繊細で細やかな神経の持ち主だった。
彼は三人兄弟の真ん中で、エリートになるべく目をかけられた兄、
そしてかわいらしく人なつっこい弟の間に挟まれて、どことなく自分に対する両親の愛情が少ないように感じていた。
子どもは平等に愛したほうがいい。
僕(青年A(@seinen1234))の友人にも、親に愛されている感覚がなくて苦しんでいた人がいたが、予後は悲惨なものだった。
学校では問題を起こし、親ともよくケンカをしていた。
親にも問題がある、そう思った。
親友の自殺
「二年目に入って仕事量も増えて、優秀な後輩たちも入ってきて、プレッシャーを感じていた。
仕事がだんだん頭から離れられなくなって…。
そうこうしているうちに眠れなくなってきたんだ。そして死が頭から離れられなくなった」
親友は社会人となり、精神疾患にかかった。
泉基樹さんは、親友の病気の原因は何か、どうすれば治るのかを必死になって調べた。
しかし、外泊の許可が出た日に生まれ育った街のビルから親友は飛び降りた。
葬儀は形式的で形骸化されていた。
エリートだらけの親戚たちが互いに近況を報告しあっていた。
陽さんは、前に座っている中年男性に学歴を聞かれたので「高校を卒業してからずっと働いています」と答えた。
その人は「そうですか」と素っ気ない態度で答え、僕の方を見た。
「あなたは?」と聞かれたので、僕は「医学生です」と答えた。
すると男性の態度が豹変した。
「どこの大学ですか?大変でしょう」と言ったのだ。
何が大変なのかよくわからないが、僕は無性に腹が立ったので、その答えを無視して席を立った。
「高卒」と「医学生」のどこが違うんだ。
高卒でも陽さんのように立派な人間もいる。
医学生でも糞みたいな連中は山ほどいる。
そういう大事なことがわかっていないから、彼を死へ追いやってしまったのではないのか。
陽さんとは、親友の彼女だ。
この親友の死で泉さんは精神科医になろうと決意したのだった。
精神科医はその人の”人生”をあずかる、とても責任の重い仕事
「患者さんの言葉にならない言葉を聞き取れる医師」
そんな医師を泉さんは目指して邁進していった。
しかし、責任とプレッシャーで、次第に自分自身が体調を崩すこととなった…。
人は誰しも、多かれ少なかれ心に傷を持っているものだ。
特に医療従事者には「心の傷」を持っている人が多いように思う。
そしてその傷が深いほど、患者さんに対して優しいように思う。
「心の痛み」を実感として知っているからだろう。
あるいは、人の傷を癒すことで自分の傷が癒されていくのを、本能的に知っているのかもしれない。
医者でなくても当てはまることだと思います。
医学的な治療が出来なくても、言葉で友人を励ましたり、そっと抱きしめてあげたり、話を聞いてあげるだけでも救われる。
そうやって、人が人を優しい気持ちで支え合う社会(ひいては世界)になっていけたらと切に願います。
精神科医の仕事、苦悩が分かる本
この『精神科医がうつ病になった (廣済堂文庫)』は珍しい本です。
精神科医の仕事、苦悩が細かく描かれているからです。
精神科医が書いた治療法の本は無数にありますが、精神科医としての大学病院勤務、開業医の仕事内容は苦労、想いが書かれている本は多くありません。
そういう意味でもこの本は貴重です。
この本を読んで、普段あなたが接している精神科医の気持ちや苦悩を間接的に知ることができるでしょう。
僕もこの本をよんで主治医に対する見方が変わりました。
おわりに
人は、あるきっかけで簡単に精神状態を崩してしまいます。
それはなにも一般の人に限った話ではありません。
精神科医だっておんなじだということです。
同じ人間です。
精神科医は常に患者の”人生”に向き合っているため、非常にストレスフルな仕事でもあります。
そのため、うまく息抜きをしていかないと、ストレス過多となって心身の調子を崩してしまうのです。
そして、うつ病を克服できる病気なのです。
そんなことを学ばせてくれる書籍でした。
本日もありがとうございました。
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